日本で隣国を強く批判する本や雑誌が数多く出版されている現状に、日中の出版人から
「冷静に相手の姿を伝える努力も必要ではないか」との声が上がっている。
「中国は確かに問題をいろいろ抱えている。だが日本で、中国の今の様子がうまく伝わっているとは思えない」。
中国関連の書籍の翻訳・出版を多く手がける日本僑報社(東京都豊島区)の段躍中編集長(56)はこう語る。
段さんは最近、日本の書店に中国に対して厳しい内容の本や週刊誌が並んでいることに心を痛めている。
「日本には表現の自由があり、中国を批判する本が売られることに反対はしない。
でも日本の書籍の過激なタイトルや内容によって中国の実際の姿が読者に誤解されている面もあると思う」と語る。
「中国各地には日本に好感を持つ人もいるし、日本に伝えるべき優れた文化や長い歴史もある。
なのに大量に出版されている批判本の陰に隠れてしまっている」と懸念する。
日本の出版人の間にも危機感は共有され始めている。本や雑誌の編集者やライターで作る労働組合「日本出版労働組合連合会(出版労連)」は
4日、東京・本郷で「『嫌中憎韓』本とヘイトスピーチ」と題したシンポジウムを開き、約110人が参加した。
基調講演したフリーライターの加藤直樹さん(47)は
「仕事帰りに夕刊紙の韓国の悪口を読んで憂さ晴らしすることに慣れている今、私たちは取り返しのつかない事態の前に立っている」と訴えた。
加藤さんは関東大震災後の東京で流言から起きた朝鮮人、中国人の大量虐殺を地震発生時から順を追ってつづった
「九月、東京の路上で」を今春出版した。「90年前の出来事が今のレイシズム(人種差別)とつながっていると考えた。
読んだ方からも『これは昔の出来事ではない』と言われた」と、長い間くすぶっている民族差別の意識が再び表面化した現状について語った。
加藤さんの本は小さな出版社から発行されたが反響を呼び、3刷で1万部に達している。
会場から、意見が相次いだ。大手出版社で週刊誌編集長を務めた男性は
「日本の週刊誌は95年のオウム事件から抑制を失ってしまったと感じる。
(現状は)『異物排除』をするようだ。中国、韓国批判の記事では、相手の言い分を聞いていない」と嘆く。
出版社の営業職の男性も「歴史教科書の記述が問題になった10~15年前から出てきてインターネット上の『世論』があおった。
それに対して、学者たちが有効な反論をしてこなかった」と述べた。
5月に河出書房新社の20~30代の社員4人が企画し、多様なジャンルの18冊の本を集めた
「今、この国を考える????『嫌』でもなく『呆』でもなく」と題したフェアに参加して、
店内にコーナーを作った書店は、全国で200店を超えている。【青島顕】
◇「刺激的で売れる」書店員悩み
集会を開いた出版労連のメンバーらが5月下旬以降に、中国・韓国を批判する本について、
知人の書店員計10人に意見を聞いたところ、「売れる」ことに悩みながら、問題を感じている様子がうかがえた。主な意見を紹介する。
・「確実に売れるタイトル(本)は、切らさずにきちんと売らなければならない。
(一方で)意地と手前勝手な責任感で、大きな声に消されかねない小さな声を並べ続けたい」
・「差別感情は昔からあったのだと思います。
『要因らしきもの』を一つ一つ『声に出して』批判していくことでしか状況を変えることはできないと思います」
http://mainichi.jp/journalism/listening/news/20140714org00m010004000c.html
「冷静に相手の姿を伝える努力も必要ではないか」との声が上がっている。
「中国は確かに問題をいろいろ抱えている。だが日本で、中国の今の様子がうまく伝わっているとは思えない」。
中国関連の書籍の翻訳・出版を多く手がける日本僑報社(東京都豊島区)の段躍中編集長(56)はこう語る。
段さんは最近、日本の書店に中国に対して厳しい内容の本や週刊誌が並んでいることに心を痛めている。
「日本には表現の自由があり、中国を批判する本が売られることに反対はしない。
でも日本の書籍の過激なタイトルや内容によって中国の実際の姿が読者に誤解されている面もあると思う」と語る。
「中国各地には日本に好感を持つ人もいるし、日本に伝えるべき優れた文化や長い歴史もある。
なのに大量に出版されている批判本の陰に隠れてしまっている」と懸念する。
日本の出版人の間にも危機感は共有され始めている。本や雑誌の編集者やライターで作る労働組合「日本出版労働組合連合会(出版労連)」は
4日、東京・本郷で「『嫌中憎韓』本とヘイトスピーチ」と題したシンポジウムを開き、約110人が参加した。
基調講演したフリーライターの加藤直樹さん(47)は
「仕事帰りに夕刊紙の韓国の悪口を読んで憂さ晴らしすることに慣れている今、私たちは取り返しのつかない事態の前に立っている」と訴えた。
加藤さんは関東大震災後の東京で流言から起きた朝鮮人、中国人の大量虐殺を地震発生時から順を追ってつづった
「九月、東京の路上で」を今春出版した。「90年前の出来事が今のレイシズム(人種差別)とつながっていると考えた。
読んだ方からも『これは昔の出来事ではない』と言われた」と、長い間くすぶっている民族差別の意識が再び表面化した現状について語った。
加藤さんの本は小さな出版社から発行されたが反響を呼び、3刷で1万部に達している。
会場から、意見が相次いだ。大手出版社で週刊誌編集長を務めた男性は
「日本の週刊誌は95年のオウム事件から抑制を失ってしまったと感じる。
(現状は)『異物排除』をするようだ。中国、韓国批判の記事では、相手の言い分を聞いていない」と嘆く。
出版社の営業職の男性も「歴史教科書の記述が問題になった10~15年前から出てきてインターネット上の『世論』があおった。
それに対して、学者たちが有効な反論をしてこなかった」と述べた。
5月に河出書房新社の20~30代の社員4人が企画し、多様なジャンルの18冊の本を集めた
「今、この国を考える????『嫌』でもなく『呆』でもなく」と題したフェアに参加して、
店内にコーナーを作った書店は、全国で200店を超えている。【青島顕】
◇「刺激的で売れる」書店員悩み
集会を開いた出版労連のメンバーらが5月下旬以降に、中国・韓国を批判する本について、
知人の書店員計10人に意見を聞いたところ、「売れる」ことに悩みながら、問題を感じている様子がうかがえた。主な意見を紹介する。
・「確実に売れるタイトル(本)は、切らさずにきちんと売らなければならない。
(一方で)意地と手前勝手な責任感で、大きな声に消されかねない小さな声を並べ続けたい」
・「差別感情は昔からあったのだと思います。
『要因らしきもの』を一つ一つ『声に出して』批判していくことでしか状況を変えることはできないと思います」
http://mainichi.jp/journalism/listening/news/20140714org00m010004000c.html
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