22日に中国西部の新疆ウイグル自治区で発生したテロ攻撃は、最近起きた他の一連の事件と呼応しているものの、記憶に残る中で
最も多くの死者を出した。2台のスポーツ用多目的車(SUV)が同自治区の首都ウルムチ市の屋外市場に突っ込み、爆発物を投げ、
31人を死亡させた。これはテロであり、非難されるべき行為だ。ただし、それは、新疆における政治的疎外の深化を浮き彫りにしており、
テロ行為の取り締まりだけでは解決しない問題だろう。
中国共産党政治局は26日、テロ行為を新たに取り締まることを誓い、新疆ウイグル自治区の党委員会書記は、1年間にわたる全国的な
反テロ取り締まり運動で、新疆が「主戦場」になると述べた。北京(中国中央指導部)が脅威を感じているのは、これまでの取り締まりにも
かかわらず、テロ行為が増えている点だろう。
(中略)
北京は、ウイグル人による暴力が総じて東トルキスタン・イスラム運動によるものだとの見解を示している。東トルキスタン・イスラム運動
は分離独立を目指す団体とされるが、実在する証拠はほとんどない(新疆は1949年より前は東トルキスタンとして知られていた)。
中国共産党の機関紙「環球時報」は昨年、ざっと100人のウイグル人がシリアでテロリストの訓練を受けていたという匿名の高官による
発言を引用しているが、真偽は確認されていない。
外国で訓練を受ける可能性はあるものの、刃物や簡易爆発物の使用は、あまり訓練を受けていない地元の勢力を思わせる手口だ。
こうした証拠は、ウイグル人の小さな団体が独自の下部テロ細胞を形成し始めていることをうかがわせる。北京にとっての悪夢は、
こういった団体が拡散し、やりたいときにやりたい場所で攻撃を始める可能性があることだ。孤立しているチベット人と違い、こういった
下部組織は中国全域で攻撃を行う恐れがある。
それにもかかわらず、中国の宣伝機関は外部の力を非難し続けている。中国から亡命した世界ウイグル会議のラビア・カーディル総裁
などだ。しかし、カーディル氏は22日の攻撃を非難した最初の1人でもあった。同氏は23日、「民間人に対する暴力は受け入れられない。
被害者の遺族に心からお悔やみを申し上げる」とし、「中国政府は東トルキスタンの全ての反対分子を武力で抑えつける方針を取って
いるが、圧倒的多数のウイグル人は依然として、平和的な手段で自由、民主主義と人権を手に入れられると信じている」と述べた。
一部のチャイナ・ウオッチャーは1年前、習近平国家主席がウイグル族に対する政府の姿勢を軟化したがっているとみていたが、
改革は実現しないままだ。習主席は昨年12月、新疆での「急務」が発展ではなく、安定だと宣言した。新疆地区の学校は依然として、
ウイグル語の教育を抑圧している。子供たちはモスクに行くことを禁じられており、ラマダン(断食月)の断食も制限されている。
ウイグルの伝統に反対する当局のキャンペーンはエスカレートしており、伝統的な婦人服の販売が禁じられている。このほか、
ひげをはやしている男性は就職や融資を断られることも多い。
カーディル氏など穏健派のウイグル指導者は亡命しているが、学者のイリハム・トフティ氏や、ウイグル語の推進派アブドゥエリ・
アユップ氏は投獄されている。自由アジア放送(Radio Free Asia)は、先週のテロ攻撃が発生したのは、ヘッドスカーフを着用したと
してウイグル族の女性と中学生が拘束されたことに抗議する人々に警察が発砲した2日後だったと報じている。
カーディル氏が指摘するように、これらは全て、暴力に訴えることを正当化しない。しかし、北京はさらなる締め付けで、ウイグル人の
怒りを増大させるだろう。北京はウイグル族の文化と自治の要求に敬意を払う必要がある。そうでなければ、中国のチェチェンに
なりかねない。
ソース(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版)
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702304357604579587252853207512
写真=トラックの荷台に立ったまま移動する武装警察隊を見送る市民
最も多くの死者を出した。2台のスポーツ用多目的車(SUV)が同自治区の首都ウルムチ市の屋外市場に突っ込み、爆発物を投げ、
31人を死亡させた。これはテロであり、非難されるべき行為だ。ただし、それは、新疆における政治的疎外の深化を浮き彫りにしており、
テロ行為の取り締まりだけでは解決しない問題だろう。
中国共産党政治局は26日、テロ行為を新たに取り締まることを誓い、新疆ウイグル自治区の党委員会書記は、1年間にわたる全国的な
反テロ取り締まり運動で、新疆が「主戦場」になると述べた。北京(中国中央指導部)が脅威を感じているのは、これまでの取り締まりにも
かかわらず、テロ行為が増えている点だろう。
(中略)
北京は、ウイグル人による暴力が総じて東トルキスタン・イスラム運動によるものだとの見解を示している。東トルキスタン・イスラム運動
は分離独立を目指す団体とされるが、実在する証拠はほとんどない(新疆は1949年より前は東トルキスタンとして知られていた)。
中国共産党の機関紙「環球時報」は昨年、ざっと100人のウイグル人がシリアでテロリストの訓練を受けていたという匿名の高官による
発言を引用しているが、真偽は確認されていない。
外国で訓練を受ける可能性はあるものの、刃物や簡易爆発物の使用は、あまり訓練を受けていない地元の勢力を思わせる手口だ。
こうした証拠は、ウイグル人の小さな団体が独自の下部テロ細胞を形成し始めていることをうかがわせる。北京にとっての悪夢は、
こういった団体が拡散し、やりたいときにやりたい場所で攻撃を始める可能性があることだ。孤立しているチベット人と違い、こういった
下部組織は中国全域で攻撃を行う恐れがある。
それにもかかわらず、中国の宣伝機関は外部の力を非難し続けている。中国から亡命した世界ウイグル会議のラビア・カーディル総裁
などだ。しかし、カーディル氏は22日の攻撃を非難した最初の1人でもあった。同氏は23日、「民間人に対する暴力は受け入れられない。
被害者の遺族に心からお悔やみを申し上げる」とし、「中国政府は東トルキスタンの全ての反対分子を武力で抑えつける方針を取って
いるが、圧倒的多数のウイグル人は依然として、平和的な手段で自由、民主主義と人権を手に入れられると信じている」と述べた。
一部のチャイナ・ウオッチャーは1年前、習近平国家主席がウイグル族に対する政府の姿勢を軟化したがっているとみていたが、
改革は実現しないままだ。習主席は昨年12月、新疆での「急務」が発展ではなく、安定だと宣言した。新疆地区の学校は依然として、
ウイグル語の教育を抑圧している。子供たちはモスクに行くことを禁じられており、ラマダン(断食月)の断食も制限されている。
ウイグルの伝統に反対する当局のキャンペーンはエスカレートしており、伝統的な婦人服の販売が禁じられている。このほか、
ひげをはやしている男性は就職や融資を断られることも多い。
カーディル氏など穏健派のウイグル指導者は亡命しているが、学者のイリハム・トフティ氏や、ウイグル語の推進派アブドゥエリ・
アユップ氏は投獄されている。自由アジア放送(Radio Free Asia)は、先週のテロ攻撃が発生したのは、ヘッドスカーフを着用したと
してウイグル族の女性と中学生が拘束されたことに抗議する人々に警察が発砲した2日後だったと報じている。
カーディル氏が指摘するように、これらは全て、暴力に訴えることを正当化しない。しかし、北京はさらなる締め付けで、ウイグル人の
怒りを増大させるだろう。北京はウイグル族の文化と自治の要求に敬意を払う必要がある。そうでなければ、中国のチェチェンに
なりかねない。
ソース(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版)
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702304357604579587252853207512
写真=トラックの荷台に立ったまま移動する武装警察隊を見送る市民
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