森達也 映画監督、作家、明治大学教授
いわゆる「よど号ハイジャック事件」。
そのときのメンバーは9人だが、今も平壌に暮らしているのは、若林さんも入れて4人になった。
かつて世界革命戦争を起こすためにハイジャックを行った彼らは今、自分たちの思想と行動の過ちを認め、刑に服する覚悟で帰国の準備をしていた。
でも帰るに帰れない事態が発生した。日本人拉致に関与していたとの容疑で、彼らのうち3名に逮捕状が出されたのだ。
2007年。第一次安倍内閣時代だ。
この国際手配に現在は、ハイジャックのメンバーである魚本さんも加えられている。
ハイジャックだけならば罪に服したとしても十数年。ならばいま帰ればぎりぎり間に合う。
人生の最期は故国で過ごしたい。そう考えていた彼らは、この容疑で帰るに帰れなくなった。
ネットなどで調べると、彼らが拉致工作に加担していたことはほぼ間違いないとの記述を散見する。でも本当にそうだろうか。
例えば1996年に偽ドル札偽造容疑で逮捕されてタイに移送されたメンバーの一人である田中義三(2007年に大阪医療刑務所で病死)は、
その後の裁判で無罪が確定している。
逮捕時にはよど号メンバーが北朝鮮の国家テロ工作に加担していたとして大きく報道されたが、無罪判決の報道はとても少ない。
その結果として「彼らは北朝鮮のテロに加担している」とのイメージは、日本国民の多くに刷り込まれている
(だいたいドル偽造は犯罪ではあってもテロではない。安易にテロを使いすぎる)。
いずれにせよ彼らへの容疑である結婚目的誘拐罪の背景には、相当に強く政治的な意図が働いている。これは断言していいと思う。
そもそも拉致問題は、オウムに続いて日本の世相を大きく変えたイシューだ。
サリン事件によって不安と恐怖を激しく喚起された日本社会は、高揚する危機意識の標的として、長く日本人拉致を続けてきた北朝鮮を発見した。
911後のアメリカを挙げるまでもなく、国民が危機意識を抱いたとき、
仮想敵への強硬な姿勢を主張する為政者は強く支持される。
だからこそこの問題を政治的に利用しようとする人や勢力が現れる。そして拉致問題は実際に、彼らにとっては強い追い風になった。
異を唱える人は激しく批判された。その程度の認識は持ったほうがいい。
滞在中は二日だけホテルに泊まってからは、日本人村の宿舎に寝泊まりした。文字どおりよど号メンバーと寝食を共にした。
疑惑についてはいろいろ質問したし話し合ったが、自分たちは無関係であるとの彼らの主張に、揺れやブレはまったく感じられなかった。
何かをごまかしたり隠そうとしている人の言動や表情ではない。
ジャーナリストではないが、ドキュメンタリー撮影や取材でそれなりに場数は踏んでいるつもりだ。
第三者からは「森も洗脳されたのか」などと言われるかもしれないが、
これはとても強い実感だ(だいたい洗脳とはそんな簡単にできるものではない)。
少なくとも拉致疑惑については、彼らは無関係だと思う。いやそもそもこの疑惑そのものが、壮大なフィクションである可能性が高い。
もちろん心証だけではない。
他にも彼らがシロであることの根拠は複数ある(ただしこれから国賠訴訟が始まる可能性があるので、ここには書けない)。
http://www.huffingtonpost.jp/tatsuya-mori/north-korea-yodogo_b_5483507.html
いわゆる「よど号ハイジャック事件」。
そのときのメンバーは9人だが、今も平壌に暮らしているのは、若林さんも入れて4人になった。
かつて世界革命戦争を起こすためにハイジャックを行った彼らは今、自分たちの思想と行動の過ちを認め、刑に服する覚悟で帰国の準備をしていた。
でも帰るに帰れない事態が発生した。日本人拉致に関与していたとの容疑で、彼らのうち3名に逮捕状が出されたのだ。
2007年。第一次安倍内閣時代だ。
この国際手配に現在は、ハイジャックのメンバーである魚本さんも加えられている。
ハイジャックだけならば罪に服したとしても十数年。ならばいま帰ればぎりぎり間に合う。
人生の最期は故国で過ごしたい。そう考えていた彼らは、この容疑で帰るに帰れなくなった。
ネットなどで調べると、彼らが拉致工作に加担していたことはほぼ間違いないとの記述を散見する。でも本当にそうだろうか。
例えば1996年に偽ドル札偽造容疑で逮捕されてタイに移送されたメンバーの一人である田中義三(2007年に大阪医療刑務所で病死)は、
その後の裁判で無罪が確定している。
逮捕時にはよど号メンバーが北朝鮮の国家テロ工作に加担していたとして大きく報道されたが、無罪判決の報道はとても少ない。
その結果として「彼らは北朝鮮のテロに加担している」とのイメージは、日本国民の多くに刷り込まれている
(だいたいドル偽造は犯罪ではあってもテロではない。安易にテロを使いすぎる)。
いずれにせよ彼らへの容疑である結婚目的誘拐罪の背景には、相当に強く政治的な意図が働いている。これは断言していいと思う。
そもそも拉致問題は、オウムに続いて日本の世相を大きく変えたイシューだ。
サリン事件によって不安と恐怖を激しく喚起された日本社会は、高揚する危機意識の標的として、長く日本人拉致を続けてきた北朝鮮を発見した。
911後のアメリカを挙げるまでもなく、国民が危機意識を抱いたとき、
仮想敵への強硬な姿勢を主張する為政者は強く支持される。
だからこそこの問題を政治的に利用しようとする人や勢力が現れる。そして拉致問題は実際に、彼らにとっては強い追い風になった。
異を唱える人は激しく批判された。その程度の認識は持ったほうがいい。
滞在中は二日だけホテルに泊まってからは、日本人村の宿舎に寝泊まりした。文字どおりよど号メンバーと寝食を共にした。
疑惑についてはいろいろ質問したし話し合ったが、自分たちは無関係であるとの彼らの主張に、揺れやブレはまったく感じられなかった。
何かをごまかしたり隠そうとしている人の言動や表情ではない。
ジャーナリストではないが、ドキュメンタリー撮影や取材でそれなりに場数は踏んでいるつもりだ。
第三者からは「森も洗脳されたのか」などと言われるかもしれないが、
これはとても強い実感だ(だいたい洗脳とはそんな簡単にできるものではない)。
少なくとも拉致疑惑については、彼らは無関係だと思う。いやそもそもこの疑惑そのものが、壮大なフィクションである可能性が高い。
もちろん心証だけではない。
他にも彼らがシロであることの根拠は複数ある(ただしこれから国賠訴訟が始まる可能性があるので、ここには書けない)。
http://www.huffingtonpost.jp/tatsuya-mori/north-korea-yodogo_b_5483507.html
続きを読む