日本とドイツ。戦後70年の「安倍談話」を巡る論争の影響もあり「過去」への姿勢で何かと比べられる両国だが、
一方は優等生扱いされることが多い。そんな状況に「ドイツがそんなに立派なのか」といらだちを募らせる言論が、
ネット上や一部メディアで目立ち始めている。「嫌独」とまではいかないが、ちょっと煙たがる「煙独」ムードがじわりと
広がっているようだ。【庄司哲也】
<おいおい戦争について一切謝罪していないドイツが上から目線かい?>
<何でも悪い事はナチスのせいで済むんだからいいよな>
いずれも、3月に来日したメルケル独首相の講演会を伝える記事への、ネット上の反応だ。メルケル首相はそこで、
ドイツが欧州で和解を進められたのは「一つには、過去ときちんと向き合ったからだ」と述べ、アジア地域の国境問題についても
「あらゆる試みを重ねて平和的な解決を模索すべきだ」などと語った。中には<ドイツも過去を反省しギリシャに土下座し
過去の援助をチャラにし賠償金を支払うべきだね>とのコメントもあった。ギリシャのチプラス政権が、第二次世界大戦中の
ギリシャ占領で被った損害の賠償をドイツに求めていることを持ち出し、ドイツを皮肉ったのだ。
「過去の総括は和解のための前提の一部分だった」。メルケル首相は3月9日の安倍晋三首相との共同記者会見でも、
ナチスとホロコースト(ユダヤ人大虐○)の罪を総括することの重要さに触れた。同11日付の産経新聞は「ナチスと日本混同か
『中韓影響』安易な同一視」との記事を掲げ、韓国のロビー活動や中国の宣伝工作の影響を指摘し「(日本は)ナチス・
ドイツのような組織的な特定人種の迫害・抹○行為など全く行っていない」と反論した。
巻頭コラム「大喝」で「『ドイツ神話』の呪縛を絶て ワイツゼッカー演説やメルケル発言を有難がるな」との見出しを掲げたのは、
月刊誌「テーミス」4月号だ。メルケル発言とともに、1月に亡くなったワイツゼッカー元独大統領の「過去に目を閉ざすものは
現在にも盲目になる」という有名な言葉を紹介し「大東亜戦争や慰安婦問題とユダヤ人大虐○は、全く違うものである」
「ドイツ贔屓(びいき)は多いが、彼らの心底も見抜かなければならない」と説く。
・メルケル氏発言 実は慎重
メルケル首相を巡っては、民主党の岡田克也代表との会談で「慰安婦問題の解決を促した」と報道され、菅義偉官房長官が
ドイツ政府から「日本政府がどうすべきだという発言はしていない」と連絡を受けたことを明らかにした。こうした混乱が「煙独」に
拍車をかけた面もありそうだが、敗戦国として共に歩んできたドイツに「上から目線」「ありがたがるな」といった言葉が投げつけられる
状況は、少なくとも正常とは言えまい。
「『教えたがり』はドイツの国民性ですが……」と苦笑しつつ「ドイツに関しどう言及するにせよ、要人の発言はもっと詳細に
見るべきです。彼らは慎重に言葉を選んでいますよ」と語るのはドイツ現代史が専門の佐藤健生・拓殖大教授だ。確かに
メルケル首相も講演の冒頭で「アドバイスする立場にない」と断るなどしており、決して高所から「こうすべきだ」という言い方は
していない。
その佐藤教授は、第二次大戦後の日独を比べるより、今むしろ着目すべきは第一次大戦後のドイツと現代の日本との
類似性だというのだ。
「第一次大戦後のドイツは世界で最も民主的といわれたワイマール憲法を持ち、男女平等の普通選挙も実施した。
初めての民主主義です。でも実際は小党が乱立して首相は頻繁に交代。ユダヤ人へのヘイトスピーチも過激化していきました」。
ワイマール憲法を平和憲法と読み替えれば、戦後日本と重なる部分は多い。「ドイツは1度の失敗に懲りず、2度目を
引き起こして心底懲りた。だからこそ第二次大戦後は『民主主義の徹底』の道を歩んだ。『罪をナチスに背負わせた』という
批判もありますが、罪はなくともドイツ人である限り責任は伴うという姿勢は、揺らいでいないのです」
(>>2以降に続く)
毎日新聞 2015年04月14日 15時22分
http://mainichi.jp/select/news/20150414k0000e010213000c.html
http://mainichi.jp/select/news/20150414k0000e010213000c2.html
http://mainichi.jp/select/news/20150414k0000e010213000c3.html
一方は優等生扱いされることが多い。そんな状況に「ドイツがそんなに立派なのか」といらだちを募らせる言論が、
ネット上や一部メディアで目立ち始めている。「嫌独」とまではいかないが、ちょっと煙たがる「煙独」ムードがじわりと
広がっているようだ。【庄司哲也】
<おいおい戦争について一切謝罪していないドイツが上から目線かい?>
<何でも悪い事はナチスのせいで済むんだからいいよな>
いずれも、3月に来日したメルケル独首相の講演会を伝える記事への、ネット上の反応だ。メルケル首相はそこで、
ドイツが欧州で和解を進められたのは「一つには、過去ときちんと向き合ったからだ」と述べ、アジア地域の国境問題についても
「あらゆる試みを重ねて平和的な解決を模索すべきだ」などと語った。中には<ドイツも過去を反省しギリシャに土下座し
過去の援助をチャラにし賠償金を支払うべきだね>とのコメントもあった。ギリシャのチプラス政権が、第二次世界大戦中の
ギリシャ占領で被った損害の賠償をドイツに求めていることを持ち出し、ドイツを皮肉ったのだ。
「過去の総括は和解のための前提の一部分だった」。メルケル首相は3月9日の安倍晋三首相との共同記者会見でも、
ナチスとホロコースト(ユダヤ人大虐○)の罪を総括することの重要さに触れた。同11日付の産経新聞は「ナチスと日本混同か
『中韓影響』安易な同一視」との記事を掲げ、韓国のロビー活動や中国の宣伝工作の影響を指摘し「(日本は)ナチス・
ドイツのような組織的な特定人種の迫害・抹○行為など全く行っていない」と反論した。
巻頭コラム「大喝」で「『ドイツ神話』の呪縛を絶て ワイツゼッカー演説やメルケル発言を有難がるな」との見出しを掲げたのは、
月刊誌「テーミス」4月号だ。メルケル発言とともに、1月に亡くなったワイツゼッカー元独大統領の「過去に目を閉ざすものは
現在にも盲目になる」という有名な言葉を紹介し「大東亜戦争や慰安婦問題とユダヤ人大虐○は、全く違うものである」
「ドイツ贔屓(びいき)は多いが、彼らの心底も見抜かなければならない」と説く。
・メルケル氏発言 実は慎重
メルケル首相を巡っては、民主党の岡田克也代表との会談で「慰安婦問題の解決を促した」と報道され、菅義偉官房長官が
ドイツ政府から「日本政府がどうすべきだという発言はしていない」と連絡を受けたことを明らかにした。こうした混乱が「煙独」に
拍車をかけた面もありそうだが、敗戦国として共に歩んできたドイツに「上から目線」「ありがたがるな」といった言葉が投げつけられる
状況は、少なくとも正常とは言えまい。
「『教えたがり』はドイツの国民性ですが……」と苦笑しつつ「ドイツに関しどう言及するにせよ、要人の発言はもっと詳細に
見るべきです。彼らは慎重に言葉を選んでいますよ」と語るのはドイツ現代史が専門の佐藤健生・拓殖大教授だ。確かに
メルケル首相も講演の冒頭で「アドバイスする立場にない」と断るなどしており、決して高所から「こうすべきだ」という言い方は
していない。
その佐藤教授は、第二次大戦後の日独を比べるより、今むしろ着目すべきは第一次大戦後のドイツと現代の日本との
類似性だというのだ。
「第一次大戦後のドイツは世界で最も民主的といわれたワイマール憲法を持ち、男女平等の普通選挙も実施した。
初めての民主主義です。でも実際は小党が乱立して首相は頻繁に交代。ユダヤ人へのヘイトスピーチも過激化していきました」。
ワイマール憲法を平和憲法と読み替えれば、戦後日本と重なる部分は多い。「ドイツは1度の失敗に懲りず、2度目を
引き起こして心底懲りた。だからこそ第二次大戦後は『民主主義の徹底』の道を歩んだ。『罪をナチスに背負わせた』という
批判もありますが、罪はなくともドイツ人である限り責任は伴うという姿勢は、揺らいでいないのです」
(>>2以降に続く)
毎日新聞 2015年04月14日 15時22分
http://mainichi.jp/select/news/20150414k0000e010213000c.html
http://mainichi.jp/select/news/20150414k0000e010213000c2.html
http://mainichi.jp/select/news/20150414k0000e010213000c3.html
引用元: ・【毎日新聞】戦後70年を巡って、日本・ドイツ比較で「煙独」ムードじわり 「慰安婦問題」関連の誤報も悪影響か[4/14]
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