ソース(MSN産経ニュース) http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140601/plc14060108100004-n1.htm
■「万景峰」数年ぶり出港
政府の情報機関が今年5月、北朝鮮のある動きをキャッチした。かつて北朝鮮と日本の間の物流の動脈だった貨客船「万景峰
(マンギョンボン)92」が数年ぶりに、母港である朝鮮半島東海岸の元山港を出港したのだ。
万景峰92は平成18年7月、当時の小泉純一郎政権が長距離弾道ミサイル「テポドン2号」発射への制裁として日本への入港禁止
措置を取って以来、元山港に“塩漬け”となっていた。
「北は拉致被害者らの再調査で、船に関する制裁解除が見込めると踏んでいたのだろう。日朝協議に前のめりだった」
日朝関係筋はこう振り返る。北朝鮮工作員の連絡などにも使われた万景峰92の入港禁止は日本が独自に科す経済制裁の象徴で、
北朝鮮は3月に中国・北京で行われた政府間協議でも入港を認めるよう要求した。
5月28日に終わった日朝政府間協議で、日本側は万景峰92の日本国内港への入港禁止措置を継続する方針を北朝鮮側に伝え、
北のもくろみは外れた。だが、万景峰92の出港は日朝協議に対する北朝鮮の期待感の強さがうかがえるエピソードだ。
■ミスターXの元部下参加
複数の政府関係者によると、日朝間で水面下の極秘交渉が始まったのは昨年12月ごろだ。
同じころ、北は中国とのパイプ役だった張成沢(チャンソンテク)元国防副委員長を処刑し、経済的な後ろ盾だった中国との関係を
悪化させていた。「金王朝」の資金源だった韓国人観光客を対象にした金剛山観光はもう6年近く中断したままだ。
「北には今、とにかくカネがない」(日朝関係筋)。この苦境を脱するには拉致問題を動かして日本の制裁を解き、経済支援を引き出す
しかないのだ。
交渉には、北朝鮮の最高指導機関である国防委員会の直轄組織「国家安全保衛部」の金(キム)ジョンチョル氏も参加していた。
金氏は、14年の小泉首相初訪朝時の秘密交渉で北側の窓口役を務めた「ミスターX」の元部下だとされ、日本側も「北の本気度を
感じた」(政府関係者)という。
3月30、31両日に北京で開かれた公式の日朝政府間協議の前には、こんな神経戦もあった。
「拉致被害者が戻ってこなければ、制裁の解除はおろか1円の支援もすることはない」
3月18日の記者会見で古屋圭司拉致問題担当相がこう述べたところ、北側が「この発言を撤回しなければもう日朝交渉はやらない」
と抗議してきたのだ。
このため、古屋氏は2日後の20日の記者会見では次のようにトーンを弱めた。
「あらゆる場面を通じて拉致問題解決のためチャンスを捉えていく」
日朝双方が細心の注意を払いながら少しずつ前進した。
■“強硬”安倍政権だから…
極秘交渉の中で北側は、拉致の可能性が排除できない特定失踪者を念頭にこう伝えてきたという。
「日本が誠意をきちんと行動で示せば、何人かは帰すことになる」
ただ、日朝間には相互不信が横たわる。日本から見れば、北は無辜(むこ)の民を連れ去り、核・ミサイル開発などで嘘を重ねてきた
不実な相手だ。一方、北からすれば日本は、故金正日正(キムジョンイル)総書記が拉致を認めて謝罪したのに日朝国交正常化と
それに伴う経済支援を実行しなかった裏切り者となる。
(>>2以降に続く)
■「万景峰」数年ぶり出港
政府の情報機関が今年5月、北朝鮮のある動きをキャッチした。かつて北朝鮮と日本の間の物流の動脈だった貨客船「万景峰
(マンギョンボン)92」が数年ぶりに、母港である朝鮮半島東海岸の元山港を出港したのだ。
万景峰92は平成18年7月、当時の小泉純一郎政権が長距離弾道ミサイル「テポドン2号」発射への制裁として日本への入港禁止
措置を取って以来、元山港に“塩漬け”となっていた。
「北は拉致被害者らの再調査で、船に関する制裁解除が見込めると踏んでいたのだろう。日朝協議に前のめりだった」
日朝関係筋はこう振り返る。北朝鮮工作員の連絡などにも使われた万景峰92の入港禁止は日本が独自に科す経済制裁の象徴で、
北朝鮮は3月に中国・北京で行われた政府間協議でも入港を認めるよう要求した。
5月28日に終わった日朝政府間協議で、日本側は万景峰92の日本国内港への入港禁止措置を継続する方針を北朝鮮側に伝え、
北のもくろみは外れた。だが、万景峰92の出港は日朝協議に対する北朝鮮の期待感の強さがうかがえるエピソードだ。
■ミスターXの元部下参加
複数の政府関係者によると、日朝間で水面下の極秘交渉が始まったのは昨年12月ごろだ。
同じころ、北は中国とのパイプ役だった張成沢(チャンソンテク)元国防副委員長を処刑し、経済的な後ろ盾だった中国との関係を
悪化させていた。「金王朝」の資金源だった韓国人観光客を対象にした金剛山観光はもう6年近く中断したままだ。
「北には今、とにかくカネがない」(日朝関係筋)。この苦境を脱するには拉致問題を動かして日本の制裁を解き、経済支援を引き出す
しかないのだ。
交渉には、北朝鮮の最高指導機関である国防委員会の直轄組織「国家安全保衛部」の金(キム)ジョンチョル氏も参加していた。
金氏は、14年の小泉首相初訪朝時の秘密交渉で北側の窓口役を務めた「ミスターX」の元部下だとされ、日本側も「北の本気度を
感じた」(政府関係者)という。
3月30、31両日に北京で開かれた公式の日朝政府間協議の前には、こんな神経戦もあった。
「拉致被害者が戻ってこなければ、制裁の解除はおろか1円の支援もすることはない」
3月18日の記者会見で古屋圭司拉致問題担当相がこう述べたところ、北側が「この発言を撤回しなければもう日朝交渉はやらない」
と抗議してきたのだ。
このため、古屋氏は2日後の20日の記者会見では次のようにトーンを弱めた。
「あらゆる場面を通じて拉致問題解決のためチャンスを捉えていく」
日朝双方が細心の注意を払いながら少しずつ前進した。
■“強硬”安倍政権だから…
極秘交渉の中で北側は、拉致の可能性が排除できない特定失踪者を念頭にこう伝えてきたという。
「日本が誠意をきちんと行動で示せば、何人かは帰すことになる」
ただ、日朝間には相互不信が横たわる。日本から見れば、北は無辜(むこ)の民を連れ去り、核・ミサイル開発などで嘘を重ねてきた
不実な相手だ。一方、北からすれば日本は、故金正日正(キムジョンイル)総書記が拉致を認めて謝罪したのに日朝国交正常化と
それに伴う経済支援を実行しなかった裏切り者となる。
(>>2以降に続く)
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