
―― 先日、朝日新聞が「信頼回復と再生のための行動計画」をまとめました、
朝日としてはこれでひとつの区切りということでしょうが、どうご覧になりましたか。
一刀両断にはしにくいけれど、率直に言ってしまえば、くだらない話だよね。
―― くだらない?
今回の「朝日バッシング」の原因を考えれば、確かに朝日側のミステークがあった。
吉田証言の記事を長年放っておいたミス。その記事を取り消したのに謝罪しなかったミス。
バッシングに対処する過程でも池上コラムの掲載見送りなどの致命的ミスがあった。
だから朝日に責任がないとは言わないけれど、そもそもこの騒動は朝日を叩きたい連中が仕掛け、
じわじわと強まった圧力に朝日が屈してしまった色彩が濃い。
その“総括”として朝日がいくら「行動計画」なるものを作ったって大した意味はない。
朝日の人たちにしてみれば、「何とかこれで許してください」ということなんだろうけれど。
―― 一連の朝日バッシングを「歴史的な事件」とおっしゃっています。
なぜこの時期に朝日がこれだけ叩かれたかといえば、まずは安倍政権の存在でしょう。
現首相は朝日を露骨に敵視してきた。失敗に終わった第1次政権期、
朝日に激しく批判された恨みもあるだろうし、根本的には、戦後民主主義的な価値への憎悪もある。
この本の取材で朝日の若宮啓文・元主筆も言ってたけれど、彼は政界のサラブレッドでありながら、
妙なコンプレックスみたいなものがある。つまり東大とかリベラル、あるいは進歩的知識人や文化人が大嫌い。
― 安倍VS朝日の延長線上で、ここまでバッシングが拡大したということでしょうか。歴史修正主義の広がりという点ではどうでしょう。
現政権の背後にはもちろん、歴史修正主義のうごめきが横たわってます。かつての戦争にはいろんな見方があるんだろうけれど、
基本的には悪いことをしたという反省の下、迷惑をかけた隣国に申し訳ないと思い、二度と海外で武力行使しないというのが戦後70年の歩みだった。
かつての自民党だってそういう立場が主流だったのに、過去はもう忘れたいという連中が増えた。
しかも冷戦体制が崩壊し、いわゆる55年体制が過去のものとなる中で政治的なリベラル陣営はほぼ壊滅し、労働組合だって息も絶え絶え。
そういう状況下、戦後民主主義的な価値をいまも表象している代表格が朝日だとみなされ、誤報というミスに乗じて一斉に攻撃が襲いかかった。
逆にいえば僕は、そうした圧力に耐え切れなくなった朝日が慰安婦問題の一部記事取り消しに追い込まれたという方が正確だと思っているけれど、
いずれにせよ、日本社会が戦後70年経って歪んだ変質を遂げつつある中で起きた歴史的事件だと考えています。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/156642/1
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/156642/2
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/156642/3
朝日としてはこれでひとつの区切りということでしょうが、どうご覧になりましたか。
一刀両断にはしにくいけれど、率直に言ってしまえば、くだらない話だよね。
―― くだらない?
今回の「朝日バッシング」の原因を考えれば、確かに朝日側のミステークがあった。
吉田証言の記事を長年放っておいたミス。その記事を取り消したのに謝罪しなかったミス。
バッシングに対処する過程でも池上コラムの掲載見送りなどの致命的ミスがあった。
だから朝日に責任がないとは言わないけれど、そもそもこの騒動は朝日を叩きたい連中が仕掛け、
じわじわと強まった圧力に朝日が屈してしまった色彩が濃い。
その“総括”として朝日がいくら「行動計画」なるものを作ったって大した意味はない。
朝日の人たちにしてみれば、「何とかこれで許してください」ということなんだろうけれど。
―― 一連の朝日バッシングを「歴史的な事件」とおっしゃっています。
なぜこの時期に朝日がこれだけ叩かれたかといえば、まずは安倍政権の存在でしょう。
現首相は朝日を露骨に敵視してきた。失敗に終わった第1次政権期、
朝日に激しく批判された恨みもあるだろうし、根本的には、戦後民主主義的な価値への憎悪もある。
この本の取材で朝日の若宮啓文・元主筆も言ってたけれど、彼は政界のサラブレッドでありながら、
妙なコンプレックスみたいなものがある。つまり東大とかリベラル、あるいは進歩的知識人や文化人が大嫌い。
― 安倍VS朝日の延長線上で、ここまでバッシングが拡大したということでしょうか。歴史修正主義の広がりという点ではどうでしょう。
現政権の背後にはもちろん、歴史修正主義のうごめきが横たわってます。かつての戦争にはいろんな見方があるんだろうけれど、
基本的には悪いことをしたという反省の下、迷惑をかけた隣国に申し訳ないと思い、二度と海外で武力行使しないというのが戦後70年の歩みだった。
かつての自民党だってそういう立場が主流だったのに、過去はもう忘れたいという連中が増えた。
しかも冷戦体制が崩壊し、いわゆる55年体制が過去のものとなる中で政治的なリベラル陣営はほぼ壊滅し、労働組合だって息も絶え絶え。
そういう状況下、戦後民主主義的な価値をいまも表象している代表格が朝日だとみなされ、誤報というミスに乗じて一斉に攻撃が襲いかかった。
逆にいえば僕は、そうした圧力に耐え切れなくなった朝日が慰安婦問題の一部記事取り消しに追い込まれたという方が正確だと思っているけれど、
いずれにせよ、日本社会が戦後70年経って歪んだ変質を遂げつつある中で起きた歴史的事件だと考えています。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/156642/1
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/156642/2
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/156642/3
引用元: ・【ゲンダイ】青木理氏「慰安婦捏造報道での朝日叩きは安倍の差し金。国益を損ねるのがメディアの仕事。嫌韓嫌中で憂鬱」[1/25]
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